アーバンライフの愉しみ

北国札幌の暮らしの様子をお伝えしています。

読書三昧

木下昌輝著「金剛の塔」

徳間文庫、429頁。 奈良の法隆寺をはじめ、全国各地に建立されている五重塔が、激しい地震にも倒壊することなく長年にわたり現存するのは何故か。 それらには、「心柱」と呼ばれる巨大な柱が塔の中心を貫くように設置されている。 塔本体と接続はされている…

桜庭 一樹著「私の男」

文春文庫、別冊文芸春秋 2006年9月~07年7月連載、451頁。2008年第138回直木賞受賞作。 幼くして両親を亡くした「花」は、漁師の父を海で、母を病で亡くした「淳悟」に引き取られる。 物語は、時間を巻き戻しながら進行し、何故「花」が両親を亡くし、独身男…

鈴木哲夫著「戦争は、ひとつの”狂気”からはじまる」

ブックマン社刊、246頁。 高市政権による戦前回帰、戦争準備ともとれる諸施策が進む中、先の大戦をもたらした「狂気」のいくつかを例示して、その危険性について考察する。 主な内容 ・ベニヤ板の自爆特攻船「震洋」 ・テニス戦争~佐藤次郎選手の悲劇 ・小…

最上裕著「峠を越えて」

「民主文学」2024年4月~25年5月連載、2段組み 284頁。 物語~四国の漁村に育った主人公(修治)は、地元の高専を出て大手電機メーカーに就職する。 職場ではミニコンの検査などを担当するが、ある日職場の勤担(勤労担当者)から呼び出しを受け、「登山仲間…

青山美智子著「月の立つ林で」

ポプラ社刊、書き下ろし260頁。連作短編5話が一つの長編を構成する。 物語~それぞれの主人公が耳にしたのは、タケトリ・オキナという男性のポッドキャスト「ツキない話」であった。 月に関する毎日の語りに心を寄せつつ、彼(彼女)らの想いも満ち欠けを繰…

森絵都著「漁師の愛人」

文春文庫、190頁。 2006年「風に舞いあがるビニールシート」で第135回直木賞を受賞した著者の短編5編を収める。 掲題作~漁村出のサラリーマンが古里に戻ってにわか漁師になった。ただ、彼に伴われて移り住んだ主人公は「二号丸」などと呼ばれ、地元の人々か…

宮本輝著「胸の香り」

文春文庫、190頁。 「30枚でちゃんとした短編が書けない作家は所詮二流だ」と先輩作家から指摘された由にて、作家生活20年を経て結実した(30枚もの多数の中から)7編を収める。 物語の筋立てとか筆力ついては、いつもの宮本ワールドで異論はないが、中には…

朱川湊人著「花まんま」

文芸春秋社刊、2003~5年「オール読み物」適宜連載の短編集、264頁。2005年第133回直木賞受賞作。 大阪の下町を駆け回る子供たちを主役にした良質の物語。 特に、第1話の「トカビの夜」は、在日朝鮮人に対する差別という重いテーマを、こうした物語として提…

宮本輝著「真夏の犬」

文春文庫、265頁。 「新潮」、「小説文芸春秋」や「文学界」等に掲載された短編9編を収める。 昭和30年代の大阪を舞台とする物語なのだが、どれも庶民の生活が等身大で描かれている。ここにも同氏の独特な小説世界がある。 ただ、個々の短編に描かれた物語は…

町田そのこ著「星を掬う」

中公文庫、355頁。 「52ヘルツのクジラたち」で21年本屋大賞を受賞した筆者の受賞後第1作。 題名の意味がわからないまま読み始めたのだが・・・。読了に至り、頭部を殴られたような衝撃を受けた。 つまり、主人公は幼い頃別れた母親と再会するも、彼女はすで…

今村翔吾著「戦国武将を推理する」

NHK出版新書、318頁。 読み応え十分の戦国武将8人(織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、武田信玄、上杉謙信、伊達政宗、松永久秀、石田三成)のプロファイリング。 直木賞作家の著者が、創作する際に必ず実施しているという登場人物の人と為りの構築(思考過程)…

馳星周著「フェスタ」

「小説すばる」2022年7月~23年9月連載、集英社刊、402頁の大作。 パリ・ロンシャン競馬場を疾駆する日本の駿馬「カムナビ」。 北海道浦河町の小規模生産者が育てた優駿の系譜は、果たして、日本初の凱旋門賞制覇を成し遂げることができるのか・・・。 直木…

今村翔吾著「八本目の槍」

新潮文庫、吉川英治文学新人賞受賞、527頁の大作。 秀吉の小姓組8人の内、賤ケ岳の戦いで功のあった7人は「7本槍」と呼ばれそれぞれ大成して行く。 他方、最側近の「佐吉」こと石田三成は、並外れた知力で独自の道を歩んだ。 本書は、「7本槍」諸将の闘いを7…

西加奈子著「夜が明ける」

2022年本屋大賞6位受賞、新潮文庫、527頁の大作。 15歳で出会った巨体の持ち主「アキ」。同名の俺は不思議と彼と馬が合い、互いに友情を育んでいくのだが・・・。 ただ、その成長の過程は通読するにも難儀なほど波乱に富んでいて、小生など年寄りには刺激が…

朝井まかて著「銀の猫 (大活字本)」

「オール読物」2014年~16年3月連載、埼玉福祉会刊、大活字本・上下658頁。 江戸時代の介抱人(介護士)を描いた連作短編集。 出戻りの「お咲」は、美貌のダメ母と二人暮らし。 母親が作った借金に追われながら、割の良い介抱人仕事に精出すのだが・・・。 …

青山美智子著「赤と青とエスキース」

PHP研究所刊、連作短編5編、書き下ろし239頁。2022年本屋大賞2位受賞。 1枚の絵画(下絵~エスキース)をめぐる5つの愛の物語。 物語~メルボルンに留学中の女子大生・レイは、現地に住む日系人・ブーと恋に落ちる。彼らは「期間限定の恋人」として付き合い…

恩田陸著「蜜蜂と遠雷(上下)」

幻冬舎文庫、962頁の大作。2016年第156回直木賞、2017年本屋大賞のダブル受賞。 過日、第19回ショパン国際ピアノ・コンクール優勝者、エリック・ルー氏の演奏をご紹介したこともあり、コンクールの実相はどうなっているのかと思い、本書を再読した。 小説の…

青山美智子著「お探し物は図書室まで」

ポプラ文庫、325頁、2021年本屋大賞2位受賞。 探し物は、本ですか? 仕事ですか? 人生ですか? ふとしたきっかけで訪れた小さな図書室。 不愛想だが太っちょで聞き上手な司書さんが、思いもよらない本を可愛い付録とともに手渡してくれる。 第1話~婦人服売…

深緑野分著「ベルリンは晴れているか」

筑摩書房刊、ちくま文庫、537頁の大作。2018年第160回直木賞候補作。(受賞作は、真藤順丈氏の「宝島」) 物語~1945年7月、敗戦直後の米ソ英仏の4ケ国統治下にあるベルリンを舞台に、米軍兵員食堂で働く17歳の少女アウグステは、戦時下、自らを保護し育てて…

湊かなえ著「落日」

角川春樹事務所刊、ハルキ文庫、428頁の大作。2019年第162回直木賞候補作。(受賞作は、川越宗一氏の「熱源」) 物語~新人脚本家の千尋は、新進気鋭の映画監督長谷部香から新作の相談を受ける。15年前、引きこもりの男が高校生の妹を刺し殺し、家に火をかけ…

「個性的て魅力的な登場人物」~「みかづき」

森 絵都さんの「みかづき」を感心しながら読んだとお伝えしました。 三世代にわたる教育一家の物語。 とりわけ、「個性的で魅力的な登場人物」に魅了された訳ですが、概略ご紹介すると以下のようになります。 ①元祖シングルマザーの祖母「頼子」(千明の母)…

森 絵都著「みかづき」

「小説すばる」2014年5月~16年4月連載、2017年第12回中央公論文芸賞、同年本屋大賞第2位受賞、集英社文庫、617頁の大作。 物語~用務員の吾郎が自室で教え始めると、子供たちは生気を取り戻した。シングルマザーの千明は、あふれる教育への情熱から、自らの…

横山秀夫著「ノースライト」

新潮社「旅」2004年5月~06年2月号連載、新潮文庫546頁の大作。2020年第17回本屋大賞入賞。 物語~無人のY邸に、なぜブルーノ・タウトゆかりの椅子が残されていたのか。仲睦まじそうに見えた施主一家はどうして姿を消したのか。 建築士青瀬稔の傑作・Y邸に北…

今年読んだ本2025

今年も、良い本にめぐり合うことができ幸せでした。 6月からは札幌の「サ高住」に暮らしています。その為か目の不調から解放され、今年は読書量が従来ペースに戻りました。 彩瀬まる著「まだ暖かい鍋を抱いておやすみ」(お勧め度:★★)奥田英郎著「空中ブラ…

彩瀬まる著「まだ暖かい鍋を抱いておやすみ」

祥伝社文庫、おいしい話6篇を収める。223頁。 心にじんわり効く、6つの食べ物の物語。 物語(かなしい食べもの)~ある日、妻の「灯」(あかり)から枝豆入りのパンが食べたいとせがまれ、レシピと首っ引きで焼いて食べさせた。「灯」は喜んで食べ、残りは冷…

奥田英郎著「空中ブランコ」

2004年第131回直木賞受賞作。文春文庫、282頁。「オール読物」2003年1月~04年1月適宜掲載、連作短編5編を収める。 物語(空中ブランコ)~サーカスのベテランブランコ乗りが、続けて落下するというスランプに陥る。最寄りの神経科を受診すると、対応した医…

岩井圭也著「舞台には誰もいない」

祥伝社刊、「コフレ」2023年3月~24年3月連載、 328頁。著者は大阪府枚方市出身、北大農学部卒という変わり種。 「われは熊楠」で第171回直木賞候補になったというので、本書を借りて読んだ。 物語~舞台のゲネプロ中、謎の死を遂げた女優。事故か自殺か特定…

唯川恵著「男と女~恋愛の落とし前」

新潮新書、253頁。 市図書館のHPで、次週借りる書籍を選択し予約するのだが、これがなかなか大変な作業である。 つまり、図書館の抱える蔵書数が膨大なこともあり、ちょっとした書名を検索するのに痛く時間がかかるのだ。 また、書名だけでは内容がよく把握…

東山彰良著「流」

講談社文庫、2015年第153回直木賞受賞作、497頁の大作。筆者(王震緒氏)は、台湾出身の小説家。福岡県在住、日本推理作家協会会員。 物語~1975年台北。内戦に敗れ、台湾に渡った不死身の祖父が殺された。無軌道に暮らす17歳の主人公は、自らのルーツをたど…

朝井まかて著「悪玉伝」

角川文庫、445頁の大作、第22回司馬遼太郎賞受賞作。 物語~大阪の炭問屋、木津屋吉兵衛は風雅を愛する伊達男で、すでに身代を危うくするほどに放蕩を重ねていたが、生家の大店・辰巳家当主の兄が急逝する。 結果、発生した生家の乗っ取りを阻止すべく乗り込…